対談「衣心伝心」株式会社ほくていホールディングス様

第5回

株式会社ほくていホールディングス
代表取締役社長

加藤欽也

昭和20年から70年の長きにわたり、郵便輸送事業を主軸に歩みを進めてきた「北海道郵便逓送株式会社」。 その8代目の社長として就任したのが加藤欽也社長です。 これまで多角経営やホールディングス化、社員体制の強化など様々な手腕を振るってきた加藤社長に、お話を伺いました。

堀田

突然なんですけどね社長、郵便の「〒」マークっていつから使われてるんですかね?

加藤氏

いやー、昔のことはあんまり詳しくなくて答えられないんですが、郵便局やポスト設置店以外で〒マークを使えるのは郵便輸送車両と飛行機くらいなんですよ。

堀田

なるほど。なかなか付けさせてくれるものではないんですね。

加藤氏

はい。そういう意味では、〒マークを付けられるってことは信用の証でもあるんです。 繁忙期になると、外部の輸送会社を使うこともあるんですが、その際もレクチャーを行って郵便に携わる責任の重みを知っていただくこともあるんです。

堀田

それほど大変な仕事ということなんですね。御社の名前である「郵便逓送」、輸送ではなく「逓送」となっているのには意味があるんですか?

加藤氏

これは逓信省に由来してるんです。

堀田

やっぱりそうだ。我々世代だと昔、電話や国鉄なんかでそんな言い方をしていた記憶が。国の重要な機関を逓信省が担ってた時期がありましたよね。

加藤氏

我々は創業して70年ほどですが、地方へ行くと100年を超える同業者も多いんです。そういう会社は私どもと同じように昔の名残で「逓送」を使っていますね。新しい会社だと郵便輸送となっていますね。

堀田

やはり歴史がある名前だったんですね。

加藤氏

でもね、地域によっては郵便輸送だけでは食べられないところもある。その他に引越しをやったり違う物流をやったり。郵政省の時代は、国から郵便以外の事業をやってはダメとお達しがあって専業ができたんですが、郵政が民営化になりその時点から郵便輸送業務も入札制となりました。その影響が郵便輸送業界にも出ているというわけです。

堀田

大変な時代になったというわけですね。

加藤氏

ええ。入札になると、安心とか信頼云々ではなく価格で決まってしまいますからね。ただ、長距離輸送だけは、安心や信頼できる会社にということで我々のような実績のある事業者に任されています。

掘田氏

話は変わりますが、東雁来に大きな郵便物流の拠点を作っているそうで。その隣に御社も移転すると伺ったんですが、その点についてはどうでしょう?

加藤氏

日本郵便がネットワーク再編ということで、全国各地に拠点を作っているんです。札幌でもその流れで東雁来に物流センターを建てることになりました。 そうなると弊社も近くにあったほうが動きやすい。現状の場所(北39条)では、冬だと1時間近くかかってしまい仕事になりません。 その分の移動コストを長い目で考えても採算が合うと判断し、弊社も東雁来に移転することに決めました。

掘田氏

いつ頃移られるんですか?

加藤氏

2017年の5月に拠点が完成しますので、そのタイミングに合わせてですね。

堀田

いやー、それは楽しみですね。そして大決断だ。

加藤氏

時代の流れもありますし、これまで70年以上にわたって先人たちが築きあげてきたものがあったからこそ成し得たことです。

堀田

社屋移転の話もそうですが、他にも加藤社長が決断したことにホールディングス化がありますよね。

加藤氏

これは先ほどの話にも出ていた社名にも関わるんですが、「郵便逓送」の名前だとなかなか他の事業がやりにくいんです。 郵政民営化の際に、弊社では不動産や異業種の会社を買った経緯があります。その時に郵便の名前があると「なんで郵便の会社が…」となる。 それはバランス的に良くないことなので、上に「ほくていホールディングス」という会社を作り、その下に郵便逓送やその他の会社を枝分かれさせる図式に変更しました。 郵便以外の事業を行っていかないとなかなか厳しい時代なもので。

堀田

何をおっしゃいますか。それにしても素晴らしい手腕でご活躍なされている。今後の展望ももう見えてらっしゃるのでしょうね。

加藤氏

東京の物流に力を入れていこうと考えています。郵便事業は減少傾向にありますがやはり本業は大切。そして物流の拠点は東京にあるため、その流れに取り残されないように準備を進めているところです。そうなってくると、今度は人材が不足し始めて…

堀田

いやあ、どこの業界も同じですね。人材の確保が大変になってきている。

加藤氏

そうですね。そういう意味で弊社ではこれまで準社員として働いてくれていた方々を、正社員に格上げをいたしました。それなりにコストはかかりましたが、社員を抱えるということはそれ以上の価値が有る。きちっとした体制を整えることで、信用が生まれ次の仕事に結びつけることができますからね。

堀田

信用や信頼は大事ですね。加藤社長の会社の社員さんを見ていると、とにかく挨拶一つとっても素晴らしい。こうした行動が信用につながっているんですね。

加藤氏

これは会社の伝統なんです。

堀田

素晴らしい伝統だ。そういえば社歌もあるんですよね。

加藤氏

よくご存知で。これは先代の社長たちが作った曲なんです。会合のたびにみんなで歌っておりました。

堀田

御社のホームページに上がっているのを見たんですが、実に良い歌詞だ。あの内容を見て社員のモチベーションも高揚しそうですよね。

加藤氏

ありがとうございます。社屋で忘年会や飲み会を以前はよく行っていたんですが、最近は居酒屋に行くことが多くなり社歌を歌う機会も減っていました。

堀田

社歌があるっていうだけで、社員は心に会社の歴史や伝統、姿勢を感じているものですよ。

加藤氏

そうですね。歌詞だけじゃなくメロディーもいい。会社の誇りだと思っています。

堀田

スポーツ振興や被災者への支援活動などの社会活動も積極的に行っていますよね?

加藤氏

はい。コンサドーレ札幌の支援や、東日本大震災の経験から、各トラックには救急用品を積んでいたり、現在の社屋は災害時に100名程度が寝泊まりできるようにしています。

掘田

地域との関わりを大事にしてらっしゃる。社長としての哲学を実践していていつも感心しております。

加藤氏

そんな大層なものではありませんよ。ただ札幌が大好きなだけです(笑)生まれ育った土地は大事ですから。その土地で70年も商売をさせていただいている。ありがたいことです。

掘田

ふるさとに感謝しなければならないですよね。昨年がちょうど70周年ということで、それを機に御社の制服もリニューアルしました。これはどういう思いがあったんですか?

加藤氏

実は私が就任した時の最初の仕事も制服の刷新だったんです。社員から話を聞くと、制服を変えたいという要望が一番多かった。それで急遽変更したのがスタートでした。それから時間が経ち素材やデザインも古くなってきて、ちょうど70周年の節目ということもあり、もっとしっかりとした制服をということでイメージワークさんに相談したというところです。

堀田

ありがたいことです。私どももその期待に応えるために御社社員への聞き取りなどを行って精一杯リニューアルを行いました。

加藤氏

そのおかげで、着やすいと社員にも大変好評ですよ。 制服は着方によって形が崩れてしまいます。あまり安いものだとそれが顕著に表れてしまう。かといって高額な制服は手が出ません(笑) なので、社員が一丸となって制服に恥じないよう姿勢を正してしっかりと与えられた業務を邁進していくことが大切と思っています。

郵便関連の事業者である、これまでのスピーディで安全に荷物を運ぶイメージを崩さず、スタイリッシュさをプラスしたデザインに仕上げました。
ブルゾンには反射パイピングを配置し、夜間の視認性を重視した安全な設計となっています。

株式会社ほくていホールディングス

代表取締役社長

加藤欽也氏略歴

北海道郵便逓送株式会社取締役相談役、昭和交通をはじめとする昭和グループ代表取締役社長を務める。札幌商工会議所副会頭。全国郵便輸送協会会長や札幌ロータリークラブ会長ほかさまざまな要職を歴任し、経済界を支える。また長きに渡りスウェーデン王国名誉領事館として国際活動の一翼を担っていた。

※ 記事の内容は取材当時のものです。